四川まみれの覚え書き

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zoom RSS 2012年夏の四姑娘山群登山―小溝・麗人峰編(後編)。

<<   作成日時 : 2012/09/16 05:56   >>

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[※観音峰について、本記事の一番最後に追記を加えました]

さて、みじめな沢ビバークからの撤退後、丸一日しっかり休養。

この日、8月7日は立秋で、気候が変わる節目の日です。旧暦というのは、ある程度天気の変化も分かるというんだからすごいもんです。実際、このあとから少しづつ、天気が安定してきたし、空気も何となく秋のような少し冷たい感じになってきました。

8日午後、BCに上がってきた王さんからフル充電済みの電動ドリルのバッテリーを受け取り、再びABCへ。今回は、東京YCCの野口さんも加わるので、とても心強い。またカレーを手持ちで運搬しました。

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こういう状態でカレーを運搬するわけです。下にごはん、上にカレーの鍋を積んでバランスを取りながら慎重に運ぶ。カレー当番の責務の重さたるや、この地球に匹敵するほど。


サクサクっと歩いて、ABCに到着。野口さんが加わったので、テントをもう一張り設営。2人づつに分かれる。夜、ひたすら降る雨の音に、ウンザリしながら寝ました。

翌日9日は、天気の様子見で停滞。空は晴れてるけどガスが多く、午前晴れて午後雨という今までのパターンと予想しての停滞でしたが、まったくその通り、15時くらいからパラパラきました。雨の中、明日への希望を失いつつ行動食をつまみ食いし、セブンブリッジで遊んだりして時を過ごし、明日からの行動は出たとこ勝負、という何かまた破れかぶれな方針を決めて、就寝。


10日。起きてテントを出ると、朝もやでガスっているけど雨は降っていない。いよいよ再アタック。

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夜明け寸前の小溝。一番左で朝日を少し浴びてる三角形のピークは仙人峰。

7時半ごろに取り付き下の装備デポ地点に到着しましたが、このときにはすでに天気はド快晴。まだ下部は陽が照ってないけど、岩の半分くらいには太陽が当たっており、日向が時間とともに下におりてくる塩梅になってるわけです。

カチカチになってる雪渓をヒーコラ言いながら上がり、取り付きへ。8時半登攀開始。1ピッチ目の途中から陽が当ってきました。光が当たると、雪渓で冷えた足に少しづつ血液が戻ってきます。太陽の光ってありがたい。

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快晴だと気分も全然違う。人工登攀もなんのそのの、ぬくぬくクライミング。でも息はゼーゼーハーハー。


最初のアタックでは4ピッチ目でビバークしましたが、今回はわりとスムーズに進み、7ピッチ目の大バンドで1日目のビバーク。
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大バンドながら、微妙に4人揃って座れるスペースがなく、大内さん1人と他3人で分かれることに。3人だとちゃんとスペースが確保できて、まあまあ足も伸ばせました。ツェルトが2つあって正解でした。夕方から少しガスっていましたが、天気は崩れず。ラーメン食って就寝。米澤さんの音楽プレーヤーもついにバッテリーが切れてしまい、残念ながらお楽しみは無し。


11日、朝から快晴。体調も気分も申し分ない。イジケ放題だった前回のアタックがウソのようです。

7時すぎ、まだ陽の当らないうちから行動開始。陽が当らないとけっこう寒く、ビレイしてたり待ってる間はプルプルしてました。
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8ピッチ目、ビバークサイトの真上からカンテラインに入る。前回はここらへんからルンゼに下りましたが、このルートの核心部はなんといっても、このカンテですから、当然ここを突破しないと良いルートはできません。

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すぐ隣には小溝最高峰のDaogou。2005年に米国人のおっさん三人(Joe Puryear、Chad Kellogg、Stoney Rechard)が、こちらの小溝側から取り付いて初登頂したとか。名前は長坪溝側の支流・倒溝(中国語の発音が“Daogou”)から。ルート名は「Salvage Op」、全17ピッチだったとか。

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8ピッチ目の終了点。わずかな支点に命を預けるおじさん達。支点が外れたら、言うまでもなく一蓮托生。なにやってるのかしら、わたしら。

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9ピッチ目、ようやく日向が近づいてきました。影との境目に向かって、「早く早く!」って言いつつプルプルしてました。9ピッチ目はボルト連打でコパーヘッド使用したり、あぶみに乗ったりの人工登攀の連続。傾斜もかなりあり、荷上げもユマーリング交じりでした。
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ユマーリング中。休み休み呼吸を整えながらでないと上がれない。

後ろを振り返ると、小溝の谷が見え、その向こうには双橋溝の対岸の山々が見え、その奥には丹波方面の山々が見えるのですが、この日は超ド快晴だったので、さらに奥には、なんと四川省最高峰のミニヤコンカ(貢嘎山、7556m)が見えました。ぼんやりですが、ちゃんと写真に収めることができました。四姑娘山群からミニヤコンカ山群まで約250kmありますが、そこまで目視できるくらいの快晴だったんですね。最高の登攀日和になりました。
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真ん中より少し左にボンヤリ見える、雪をかぶった三角のピークがミニヤコンカ。

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ひたすら人工登攀交じりでジリジリ進む。天気がよくなきゃやってられませんな。

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10ピッチ目終了点で待機中の野口さんと、その下で米澤さんをビレイ中の大内さん。

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ハーケンを回収しつつ登る米澤さん。


この日は最終的に13ピッチ目まで登ってビバーク。12ピッチ目の終了点で日が暮れてしまい、最後の20mをヘッドランプを点けて登攀。
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暗い中、小さなピナクル(岩塔)の裏に小さなスペースを工作し、ビバークサイトにしたのですが、こちらは前日とちがって狭小。ツェルト1張りにつき2人づつ入って寝ましたが、ぼくの場所は岩の上。シュラフカバーに足を突っ込んで座った状態で寝た(寝ようとした)のですが、岩が前傾してたので、前にずるずる落ちるんですな、これが。夜中に何度も後ろにズリ上がり、体勢を立て直してはまた落ち、を繰り返してました。お陰でほとんど寝ることはできませんでしたが、明け方少し前にツェルトから頭を出してみると、頭上に星空、眼下に雲海、東の空にうっすらと夜明けの気配。
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昼間の青天の景色も良いものですが、夜明け前の景色も、見てると気分が晴れ晴れとしてきます。
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こちらは雲海。もうだいぶ晴れてきてますが。手前が明るいのはヘッドランプのせいです。


12日。ほとんど寝てないので、起床という感じではないのですが、6時ごろからモゾモゾと朝食。もちろん天気はド快晴。

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7時すぎ登攀開始。あと少しでピークのため、必要のない装備はビバークサイトにデポ。昨日までとは打って変わって身が軽く、ようやく荷上げの辛さから解放されました。でも息はゼーゼー。このルートは上から陽が当ってくるので、この日は行動開始直後から日向になり、ピナクルの陰で冷たくなった体もすぐにあったまりました。

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14ピッチ目で朝日を浴びる米澤さんと野口さん。この日は全て野口さんがリード。

前日よりもだいぶ傾斜が緩くなり、人工登攀もさほど多くなく、なによりピークがすぐそこに見えてるので、気分は良い。テンション高めで登ることができました。

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最終の17ピッチ目。ピーク直下のバンドまで、あと数メートル。

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そんでもって11時すぎ、ピーク直下3メートルに到達。ヒゲもだいぶ汚く伸びてきてます。

今回は仙人峰のときみたいにピークは踏まず。なんたって麗人峰ですからね。麗人の頭を足蹴にしちゃいけません。というより、もうさっさと下りようぜ、みたいな雰囲気になってたから。

バンドが狭いので、あまり動き回れませんでしたが、ピークの向こう側の大溝(一昨年入った谷)、その奥に見えるポタラ峰に野人峰、反対の長坪溝側の四姑娘・神山、双橋溝の北側にある畢棚溝の山々まで見渡せる大パノラマを、しばし堪能。
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手前の広い谷が大溝。真ん中あたり、大溝の奥にどっしり構えてるのがポタラ峰、その右に野人峰(で、あってるかな)。その奥に畢棚溝。

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右手前が本峰の観音峰。意外と高度差があります。しかも大ギャップに阻まれるので、こちらのピークから観音峰ピークまで行くのは、相当骨が折れそうです。

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こちらは小溝および長坪溝側。写真左から、Daogou、奥に四姑娘山、左肩に雪がのってるのがChibuの本峰5450m、一段下がって奥に見えてる三角が神山(プニュー)、その右のピークが、次の目標の針峰(Chibuの第二峰)。

さて、ひとしきりはしゃいで登頂を喜び合ったあと、とっとと下降。
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これといったトラブルもなく、スムーズに下降して17時半、取り付きに着地(?)。後発メンバーの山崎さんも、Daogouと観音峰の間のコルまで上がってきており、ぼくらの下降を眺めていました。眺めながら、「お前らばっかり登りやがって…!」と自分が参加できなかった悔しさを噛みしめていたとかいなかったとか。

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雪渓下まであと1ピッチ。そりゃもうみんな笑顔満開ですよ。下では先に下りた大内さんと米澤さんが、山崎さんの持ってきた水(しかも雪渓で冷やしてある)を飲んで幸せになってました。まだこっちは上にいるのに、聞えよがしに「うんめぇー!!」とか叫ぶので、それはそれで悔しかったです。若干焦りながら、水を求めて下降。

無事、登頂して生還しました。

このあとABCまでサクサク歩いて帰還と思いきや、荷物まとめて歩きだしたとたんに、今までの天気から一転、激しい雨が降り出しました。しかも途中からみぞれまじりに。まるでぼくらが下降を終えるのを待っていたかのように降り出しました。ここで降られたところで、もう怖いもんなしなんですが、さすがに睡眠不足だし空腹だし寒いし、なにより水分不足で消耗が激しいため、あっちで転びこっちで滑りしながら、ぐったりしつつABCに到着。

みんなで転がり込むようにテントに入り、迎えに来てくれた王さんと山崎さんに翌日のABC撤収と次の針峰ABCへの移動の段どりを伝えてから、ようやくホッと一息。王さんと山崎さんがBCに帰ったあと、4人で登頂祝い。コーヒー・ホットジュース・ミルク・スープなど、あるやつを片っ端から飲んで水分補給。腹にも溜まらず、トイレにも行きたくならず、ひたすら吸収しました。ちょっと落ち着いたところでメシ。王さんが出前してくれた姜さんの野菜炒めごはんも最高に美味かったです。
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この日はABC泊。大きな岩壁を登り終え、悪天候のわずかな合間を縫っての登攀であり、しかも大ベテランの大内さんと米澤さんをして「今まで開拓した中で最高のルート」と言わしめるほどのルートが開けた、ということもあって、4人でテントの中で遅くまでダベってました。


ちなみに今回のこのルート名は、「曙光のカンテ」。朝日がピークから当たり始め、時間とともに下に向かって当たってくることから、大内さんが命名しました。

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大雑把なルートはこんな感じ。


ちなみにこの麗人峰及び本峰の観音峰、裏側の大溝から見ると、こんなふうになってます。
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一昨年大溝でこれを見てたんですが、その時はまさかこの反対側を登ることになるとは思ってもいませんでした。


こんな感じで、麗人峰の登攀は終了。次の目標の針峰には、ぼくは不参加。その理由については、次回。別にもったいぶるようなことでもないんですけど。



[追記11/6] 麗人峰の本峰・観音峰、誰も登ってないだろうと思ってたら、どうやら2006年にKester BrownとVaughn Thomasという二人の欧米人が登頂してた模様。我々はピークハントではなくルート開拓が目的なので、初登頂云々は二の次なのですが、そういう記録があるのならキチンと書いておかないといけないと思い、追記しました。もともと観音峰には名前が付いておらず、彼らは「Daogouの西ピーク」と呼んでます。「The American Alpine Journal」の記事によると、小溝側から登ったそうです。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
今回の山もすごい絶景ですね〜
まさに天空の世界!
まだ続くんですね。ぞくぞく!^^
chicca
2012/09/23 19:41
山のレポートはまだ続きますが、ぼくの登攀は今回で終了でした。
次回は下から山を眺めます。これはこれで楽しいですよ^^v
ムロヤ
2012/09/24 14:05

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